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買収防衛策

現在、買収防衛策と呼ばれる方法には幾つか手法があります。
@その有する株式の議決権を制限する方法
Aその有する持株比率を下げること。

その大多数は、新株を発行する事によって、特定の株主(大量保有者)の持株比率を低下させることにあります。毒薬条項(ポイズン・ピル)と呼ばれる項目です。

この特定の株主の持株比率を低下させる方法は、買収防衛策としては一般的に広まっています。導入した側(企業側)、特定の株主(買収仕掛側)でしばしば法廷で争われています。 これは、毒薬条項が完全な防衛策では無いことを意味しています。公開会社は、だれでも自由に株式を売買することができます。にも関わらず、好ましくない者には買って欲しくないと言うのは無理な話です。

一方で、株主全体の利益を毀損する者から、株主ひいては会社を守る必要がある事も事実です。そこで株主利益を守るための防衛策を導入する為の施策を講じる必要があります。

▼ 従来の防衛策 ▼ 新しい買収防衛策 ▼ 結びにかえて 

従来の防衛策

従来は、事前に防衛策を導入すると言うよりは、大量保有者が現れた時点(有事)で、対策を講じるケースが殆どでした。方法としては、新株予約権を発行して、大量保有者の比率を下げる(薄める)手法です。本来、新株発行(予約権含む)は、資金調達を行うことを目的としています。発行価格が特に有利であったり、主たる目的以外で発行されたとして、裁判所が差し止めた事例も多くあります。裁判所は、このような本来の目的外と思われる新株・新株予約権発行について認められる条件を示しています。有事の際に、苦し紛れに用いる方法では限界があることを示しています。

新しい買収防衛策

昨今は、事前に買収防衛策を導入しているケースが殆どです。買収防衛策を発動する迄に一定の手続きを踏むことで、必要性を担保して、差し止めリスクを少しでも回避することを目的としていると思われます。

【事前警告型ライツプラン】
これは、一定数の株式保有者(20%を設定)が出現した場合に、その者に対して、買収の目的・内容・買収金の出所・経営ビジョンなどを提出させて、株主共同利益を毀損する者か否かを事前に調査する方法。ここで、株主共同利益を毀損すると認められた場合には、新株予約権などの発行に伴う買収防衛策を導入する。 この手法は、事前にこのような事項を開示していることにあります。

従来のように、一定数の株式保有者が出現した時点において、一律に新株予約権を発行するなどの防衛策を導入しないことが特徴です。買収防衛策を導入が必要と判断された場合には、買収者以外の株主全員に対して、新株予約権の無償割当を行います。 事前に買収者から聞き取りなどを行った上で、株主共同利益の有無について判断することから防衛策導入について、正当性が担保されているように見えます。 ただし、この事前警告型ライツプランも完全な買収防衛策ではありません。いくつかの問題点が挙げられます。

株主共同利益の判断について
  株主の共同利益を害するか否かの判断については、取締役会や第三者で構成される委員会などにおいて判断されます。この構成メンバーの任命・独立性の問題があります。会社側が選任したメンバーが判断することになれば、公平性に疑義が生じます。形式的に判断することになる可能性があります。最初から買収防衛策の導入の結論ありきとなる危険性があります。
勧告・決定の拘束力
  判定委員会などの防衛策の導入を可とする判定が行われた場合について、この決定にどこまで拘束されるのか範囲が明確ではありません。また決定の位置づけも不明確です。
差止めリスク
  このように事前の防衛策の導入を精査したとしても差し止められる危険性はあります。最終的には、裁判所の判断を仰ぐことになります。どの程度の割合で差し止められるのか未知数です。

結びにかえて

現在一般的となった買収防衛策も完全ではありません。真に防衛することが必要なのか否かについては、事案ごとに慎重に判断する必要があります。株主利益と言いながら、経営者の保身となるような防衛策を導入するのは認められないはずです。買収者が明確なビジョンを持って、買い占めて経営に参加する意思を有していた場合には、防衛策は全く意味をなさないことをしっかりと認識する必要があります。