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企業再生型M&A(産活法の活用)

はじめに

企業再生型M&Aとは、企業が債務超過などにより倒産の危機に瀕している場合において、不採算部門を切り離して価値のある事業部門を再生させることを主たる目的として行われるM&A(吸収合併・会社分割・事業譲渡)を指します。また、将来性のある事業部門について他の企業に買収させるなどの方法により、成長部門発展を行う場合もあります。本来の戦略的行為として行うのではなく、企業救済として活用されるケースです。通常、吸収合併においては、救済を目的として行われるケースが多くあります。

倒産手続きに過程において、企業再生型M&Aとして事業譲渡・会社分割などの手法を用いることもあります。倒産手続きを用いない場合でも、債務超過に陥った企業の再生手続きの一環として広義のM&A(吸収合併・会社分割・事業譲渡)が用いられることもあります。状況によっては、無対価合併などの手法も用いられるケースもあります。再生する企業の財務状況などの個々の事情を精査してベストな手法を選択することが可能となります。通常行われる戦略的M&Aとは若干異なります。

産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)を用いることで、国からの支援措置、具体的には登録免許税の軽減、不動産取得税の軽減、許認可等の承継、会社分割・事業譲渡(M&A)を行う場合の支援などが受けられます。法的整理を用いることなく、自力での事業再生が可能となります。金融支援などもあり、より攻める企業再生を行えます。産活法の活用で再生が行い易くなります。

▼ 倒産手続きの概要  ▼ 具体的な手法 
▼ 産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)について
▼ 産活法による「中小企業承継事業再生計画」の認定申請  ▼ 当事務所の関わり 

倒産手続きの概要

倒産手続きには、大きく分けて2種類あります。@裁判所を介在させることにより行われる法的倒産手続き、A裁判所を利用しないで行われる手続き(私的整理)。法的倒産手続きは、さらに分類され、破産・特別清算(会社法510条)などの事業を廃止して清算を目的とする「清算型」、事業の継続をさせ再生させる「再建型」があります。

再建型においては、民事再生型(DIP再建)と会社更生手続きがあります。いずれも裁判所が関与して負債を減らして会社の再建を図ることを目的としています。全体像を図にすると下記のようになります。

●民事再生型(DIP再生)
債務者自身(倒産する会社の経営者)が再建手続きを行うことになります(DIP再生)。特にオーナー型企業においては、創業社長(オーナー)の個性が強く、事業の遂行性、取引先などとの関係を考慮すると、経営者を交代させるよりも、続投させることのメリットが大きいと言えます。

民事再生手続きにおいては、合併・会社分割などの組織再編行為については再生計画で行うことができません。通常の株主総会決議が必要となります。一定の事業譲渡については裁判所の許可のみで行う事が可能です(民事再生法42条1項、43条参照)。

⇒DIP型企業再生の詳細はコチラ

●会社更生型

会社更生手続きにおいては、民事再生(DIP再生)と異なり、裁判所が選任した更生管財人において再建手続きが行われます。規模の大きな企業においては、社長の個性が特に影響しないことから、従来の経営者とは異なる第三者によって再建手続きが行われます。減資・会社分割・合併・事業譲渡について更生計画により行うことが可能です。通常要求される株主総会の特別決議などが不要となります。会社更生手続きを行う場合は、100%減資が行われます。100%減資を行う場合は、取得条項付株式が用いられます。

⇒会社の減資に関する詳細はコチラ

具体的な手法

会社再生型M&Aにおいては、会社分割・事業譲渡が適していると思われます。この2つの手法は、対象となる事業を取捨選択できることにあります。すなわち、優良の事業部門だけを選択して買収することが可能です。一般的な合併(吸収合併・新設合併)は、包括承継であることから取捨選択の余地がありません。優良な部門・不採算部門も併せて買収しなければなりません。この包括承継が最大のデメリットです。結局、不採算部門も含めた丸ごと吸収するとなれば、吸収した側にとって再生どころではありません。潜在債務までも承継することがネックとなります。

民事再生手続きを申立てると、事業譲渡を行う場合においても、裁判所が関与します。利害関係人の意見聴なども行われます。さらに、事業譲渡を行おうとする資産に担保権が設定されていると、担保権消滅許可の申立が必要となります。民事再生申立を行うケースは、債権者が多数であるなどの大掛かりな場合にのみ利用するのがベストといえます。法的倒産手続きが必要となる前に、再生戦略を立案する必要があります。

⇒会社分割の詳細はコチラ
⇒事業譲渡の詳細はコチラ
⇒吸収合併・新設合併の詳細はコチラ

企業再生M&Aに会社分割・事業譲渡を用いるとしても、注意する点があります。会社債権者に対する問題です。会社分割においては、債務超過の会社に対して債権者を保護する手続きを行う必要があります。この手続きが厄介です。また、会社の債権者を害する会社分割については、詐害行為取消(民法424条)の対象となる可能性があります(裁判例あり)。状況を把握し、対価の相当性など慎重に進める必要があります。
組織再編行為を活用しなくても、会社の減資を行う、株主を入れ替える(種類株式を活用)などの手法もあります。個々の事情に応じた手法を選択することが可能です。

産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)について

産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)に、「中小企業承継事業再生計画」の認定制度が創設されました(産活法31条以下)。中小企業が第二会社方式による「中小企業承継事業再生計画」を作成し、その計画が一定の基準を満たせば、計画の認定を受けることができます。

※「中小企業承継事業再生計画」とは、中小企業が会社の分割又は事業の譲渡によりその事業の全部又は一部を他の事業者に承継させるとともに、当該事業者が承継した事業について収支の改善その他の強化を図ることにより、当該事業の再生を図る計画。

「中小企業承継事業再生計画」の認定を受けると、支援が実施されます。具体的には、@特定許認可の承継、A登録免許税の軽減、B資金調達支援です。

資産を承継した会社が営業を行う場合に、許認可を再取得する必要がある場合において、特例として、許認可の承継が認められます。すなわち、再取得の必要がありません。承継が認められる許認可は、次のとおりです。
 

旅館営業の許可(旅館業法第3条)
・ 一般建設業の許可・特定建設業の許可(建設業法第3条)
・ 一般旅客自動車運送事業の許可〈バス・タクシー〉(道路運送法第4条)
・ 一般貨物自動車運送事業の許可〈トラック 〉(貨物自動車運送事業法第3条)
・ 火薬類の製造の許可・火薬類の販売営業の許可(火薬類取締法第3条及び第5条)
・ 一般ガス事業の許可・簡易ガス事業の許可(ガス事業法第3条及び第37条の2)
・ 熱供給事業の許可(熱供給事業法第3条
※この他食品衛生法、酒税法、自然公園法の許認可審査が円滑になります。

登録免許税も軽減されます。具体的には次のような軽減措置があります(抜粋)。
 

株式会社の設立又は資本金の額の増加   0.7%→0.35%
事業譲受による不動産の所有権移転(建物)   2.0%→1.6%
分割による不動産の所有権移転             0.8%→0.2%
事業譲渡による不動産の取得(建物)     4.0%→3.3%

資金調達支援として、日本政策金融公庫、中小企業信用保険法の特、中小企業投資育成株式会社法り特例が適用となり、通常より有利な条件で資金調達を行うことが可能となります。

産活法による「中小企業承継事業再生計画」の認定申請

産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)による「中小企業承継事業再生計画」の認定には、9つの条件が設定されています。これらの条件をクリアーしなければ認定は得られません。申請する為には、多数の書類が必要となります。申請手続きの流れ、条件などについてはお問合せください。

当事務所の関わり

本来、M&A(合併・会社分割・株式交換・事業譲渡など)は、企業の成長戦略・競争力向上などの目的で用いられることが多くあります。もっとも、合併などは丸ごと抱える必要があることから、余剰な部門について取捨選択することができません。また、潜在的債務・将来における債務も引継ぐ必要があるので、ある程度のリスク覚悟が必要です。他方、会社分割・事業譲渡については、コアな部門だけを取り込むことが可能となり、より現実的に選択することが可能です。

企業再生においては、法的手続きを行う場合には、費用・時間の両面での負担が必要となります。手続きにおいても上記図をみると、債権者に対する配慮などから、様々な手続きが必要となります。私的整理(会社分割・事業譲渡活用)においては、会社法の手続きを履践するだけ良いことから、スムーズに進めることが可能です。完全に買収するのではなく、期限を決めて再生可能となるまで優良部門を預かるなどの柔軟な対応もできます。緻密な戦略立案が企業再生にとっては必要不可欠です。

また、産活法を利用することで、国などの後見的支援を受けながら、自力で事業再生を行うことが可能となります。再生するための法律を活用しながら、個々の事情に応じた手法を選択すること必要です。

富山綜合法務事務所は、ビジネス法を中心に企業法務を得意とはています産活法に基づく「中小企業承継事業再生計画」申請を取扱う数少ない事務所です。産活法適用・その他手法も併せてご提案致します。自力による企業再生をサポート致します。まずは、お問合せください。
※産活法を活用しての事業再生に関するご相談は、事前予約制とさせて頂きます。