会社形態の変更
はじめに
会社法において会社(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社)を設立した後にその組織形態を変更することが認められています(会社法743条)。会社組織変更と呼ばれる行為です。「組織変更」とは、「会社が法人格の同一性を保ちながら、株式会社から持分会社へ組織構造を変更して会社の種類を変え、逆に持分会社から株式会社に組織構造を変更して会社の種類を変更する」ことです。
当初は、設立費用の安い合同会社(LLC)を設立して、その後規模が大きくなったことにより、株式会社へと変身する場合が該当します。株式会社として設立したが、決算書などの開示書類の作成を止めるために合同会社に変更する場合もあります。
会社法が規定している組織再編は、株式会社から持分会社(合名・合資・合同会社)への変更と、持分会社(合名・合資・合同会社)から株式会社への変更です。持分会社間の変更、例えば、合資会社から合同会社への変更は組織再編行為ではありません(会社法638条)。会社間の組織再編行為・定款変更による持分会社間の変更は、自由に行うことが可能です。
持分会社(合名・合資・合同会社)から株式会社に組織変更して、再度、持分会社(前の会社と同一でなくても良い)に再変更することも可能です。この再変更は、合名・合資会社において有用です。会社戦略(M&A)において上手く活用することにより一定の効果と同様に法的効果を生み出すことが可能です。具体的な効果についてはお問合せください。
有限会社(特例有限会社)の組織再編行為も可能となっています。なお、現在では有限会社を設立することはできません。有限会社における組織再編行為の方法についてはお問合せください。
▼ 株式会社から持分会社(合名・合資・合同会社)への組織変更
▼ 持分会社から株式会社への組織変更 ▼ 持分会社から株式会社への組織変更
▼ 活用の可能性・当事務所のかかわり
株式会社から持分会社(合名・合資・合同会社)への組織変更
株式会社から持分会社(合名・合資・合同会社)へ組織変更を行う場合には、組織変更計画を定める必要があります(会社法743条)。組織変更計画において記載しなければならない事項は法定されています(会社法744条)。具体的な記載事項は下記のとおりです(抜粋)
変更後の会社の種別(合名・合資・合同会社) | |
変更後の会社の目的、商号及び本店所在地 | |
変更後の会社の社員に関する事項(住所・氏名・出資額・有限又は無限の区別) | |
効力発生日(変更可能) |
変更後の持分会社の資本金は、変更前の株式会社の資本金額と同額となります(会社計算規則33条1項)。すなわち、資本金の額については変化しません。効力発生日に持分会社となります(会社法745条1項)。会社の目的、商号及び本店所在地、社員に関する事項などについては定款を変更されたものとみなされます(会社法745条2項)。
持分会社から株式会社への組織変更
持分会社から株式会社へ変更する場合も、上記と同様です。組織再編計画において記載しなければならない事項が若干異なります(会社法746条)。
変更後の株式会社の目的、商号、本店所在地及び発行可能株式総数 | |
変更後の株式会社の取締役の氏名(代表取締役選任までは不要) | |
持分会社の社員が組織変更に際して取得する株式の数(種類株式においては、種類・数) | |
効力発生日 |
株式会社として最低限必要な事項について記載する必要があります。なお、株式会社を設立する場合の定款は公証人の認証が必要とされていますが(会社法30条1項)、持分会社から株式会社へ組織変更する場合については、公証人の定款認証は不要と解されます。
資本金は、持分会社の資本額が株式会社の資本額となります(会社計算規則34条1項)。 効力発生日に株式会社となり(会社法747条1項)、会社の目的、商号、本店所在地及び発行可能株式総数、取締役に関する事項などについては定款を変更されたものとみなされます(会社法747条2項)。
会社組織再編行為の具体的な流れ
株式会社から持分会社(合名・合資・合同会社)へ変更、持分会社(合名・合資・合同会社)から株式会社へ組織変更する場合には、既存の債権者・株主に対して大きな影響が生じる可能性があります。そこで会社法は、組織再編行為を行うについて、一定の行為(合併等に準じた)を要求しています。また、債権者を保護する手続きも必要です(会社法779条)。
会社組織再編行為についてのおおまかな流れは下記のようになります。
活用の可能性・当事務所のかかわり
組織再編行為は、合同会社(LLC)から株式会社への変更として活用されると思われる。特に初期に株式会社を設立すると設立費用が多く必要となります(定款認証・登録免許税)。これに対して合同会社(LLC)は初期設立必要が安く抑えられる。この点を比較しても、初期においては合同会社(LLC)を設立メリットは大きいでしょう。また、特に合名・合資会社が戦略的M&A(合併・買収)などを行う場合において、会社組織再編行為を用いることで幅の広い戦略を選択することが可能となります。
富山綜合法務事務所は、会社法務・M&Aなど会社再編行為を得意しています。特に組織再編行為は、合併などに準じた手続きが要求されています。専門家の助言なく複雑な会社法の条文をしっかりと把握して、ミスなくスムーズに進めることは困難を極めます。会社法の専門家の的確な助言を受けることにより、適切かつ迅速な会社組織運営・再編行為が可能となります。
また、会社設立を扱う事務所は多くありますが、設立後の組織再編・戦略立案・資金調達など総合的な会社法務サービスを提供している事務所は多くありません。富山綜合法務事務所は会社法務を得意としていることから、会社法に関する事項は総合的にアドバイスができる数少ない事務所です。
会社の組織を変更したいとお考えの方は、まずご相談ください。その他の事項、M&A(合併・会社分割・株式交換・事業譲渡など)・資金調達・日々の会社法務など会社法に関する事項も併せてご相談ください。