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合併等に伴う許認可・刑事責任などの承継

▼ 一、許認可の承継  ▼ 二、刑事責任の承継について ▼ 三、民事責任の承継について

一、許認可の承継

合併等(事業承継・会社分割・吸収合併など)が行われた場合には、許認可に対する承継問題が生じます。この問題は、個々の許認可により取扱いが異なります。会社法の規定によれば、会社分割・吸収合併が生じた場合には、権利義務が承継される旨の規定があります。この規定に従うならば、許認可等の地位が承継されることになります。

ただし、すべての許認可に関して、地位承継を認めているわけではありません。特に新設分割の場合は、許認可は承継されません。新たに再申請を行う必要があるので注意が必要です。

 個別の根拠法が承継を認めていない場合には、新たに許認可申請を行う必要があります。 それぞれの法律により取扱いが異なるので、個々の根拠となる法律(風営法・医療法など)の規定を精査することになります。許認可事業を対象とした事案においては、この点をしっかりと把握してM&A(合併・買収)を行う必要があります。

具体的に考えられる承継のケースは下記のようになります。

法律に規定されていない(当然承継)
相続・合併・事業承継の場合に承継が認められる
相続・合併の場合に承継が認められる
相続についてのみ承継が認められる
合併についてのみ承継が認められる
事業承継についてのみ承継が認められる

【注意点】
許認可事業においては、承継に際して届出が必要なケースがほとんどです。事前に必要な場合、事後に必要な場合など、個々の業種により異なります。承継が認められない事業は新たに許認可申請しなければ、業務を行うことができません。申請から実際の許可が下りるまで相当の日数が必要なものもあります。

浴場業
都道府県知事に届出。公衆浴場法2条の2
映画、演劇、音楽、スポーツ、演劇などの興業場営業
都道府県知事に届出。興業場法2条の2
クリーニング業
都道府県知事に届出。クリーニング業法5条の3
理容業
都道府県知事に届出。理容師法11条の3
美容業
都道府県知事に届出。美容師法12条の2
飲食店営業
都道府県知事に届出。食品衛生法53条
たばこ特定販売業
財務大臣に届出。たばこ事業法14条。たばこ小売販売については、27条。
塩製造業者
財務大臣に届出。塩事業法8条。
アルコール製造業者
経済産業大臣に届出。アルコール事業法7条
特定貨物自動車運送事業者
国土交通大臣30日以内に届出。貨物自動車運送事業法35条7項。
貨物軽自動車運送事業者
国土交通大臣30日以内に届出。貨物自動車運送事業法36条3項。
自動車分解整備事業者
地方運輸局長30日以内に届出。道路運送車両法82条。
旅行業
観光庁長官に届出。旅行業法16条。
ガス事業者
経済産業大臣に届出。ガス事業法11条。簡易ガス事業者にていては、ガス事業法37条の7(同11条を準用)。
一般旅客自動車運送事業者
国土交通大臣の許可。道路運送法36条。合併・分割は、大臣の許可が無いと効力は生じません(同2項)。相続の場合は、60日以内に国土交通大臣の許可(同37条)。
一般貨物自動車運送事業者
国土交通大臣の許可。貨物運送取扱事業法29条2項。合併・分割は、大臣の許可が無いと効力は生じません(同2項)。相続の場合は、60日以内に国土交通大臣の許可(同31条)。
利用運送事業者
国土交通大臣の許可。貨物自動車運送事業法30条。合併・分割は、大臣の許可が無いと効力は生じません。相続の場合は、60日以内に国土交通大臣の許可(同30条)。
ホテル・旅館営業
都道府県知事の承認。旅館業法3条の2。相続の場合は、 60日以内に都道府県知事の承認を得る(同3条の3)。

二、刑事責任の承継について

刑事責任については、存続会社・新設会社に追及することはできません。ただし、確定済みの罰金刑・没収・追徴については、存続会社・新設会社に承継されます(刑事訴訟法492条)。

三、民事責任の承継について

民事訴訟については、存続会社・新設会社に承継されます(民事訴訟法124条1項2号)。ただし、会社法の訴えについて、取締役選任決議の取消しなどの訴えの利益が消滅するものなどは承継されません。

このような事項は、貸借対照表(バランスシート)などの計算書類などからは明らかになりません。事前の法的監査・調査(デューデリジェンス)を入念に行う必要があります。