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株式内容による防衛策

買収防衛策には、前述のように一定の手続き・機関スキームを利用した大かがりな手法と、株式の内容(個性)に着目した手法とあります。前者は、比較的に規模の大きな企業向けと言えます。後者は、オーナー型企業などの規模があまり大きくない企業向けの手法と言えます。

一概にいずれの防衛策が優れているのかを決することはできません。大切な事はそれぞれの実情にマッチした手法(防衛策)を導入する事が肝要と言えます。

▼ 種類株式を用いる方法 ▼ 議決権を制限する手法 ▼ 単元株制度を利用 
▼ 株式分割による買収防衛策 ▼ それ以外の防衛策 ▼ 結びにかえて

種類株式を用いる方法

会社法において、内容の異なる株式(種類株式)を発行する事が認められています(会社法107条・108条)。この個性は、株式ごとに定めることが可能です。この株式の個性に着目する事で買収に対抗する手法を導入することができます。ただし、この株式の内容(個性)は、複数組合せることは可能ですが、法定以外は作り出すことはできません。実情に沿った種類株式を用いれば、効力を発揮します。

議決権を制限する手法

議決権を制限することが出来る株式を発行することが可能です。制限出来る内容も、全てに関して議決権が無い(完全無議決権)と、一部に関して議決権が無い株式があります。ここでポイントになるのは、議決権の範囲を自由に設定出来ることにあります。例えば、資金調達に関しては、議決権を有しない、一定数を保有した時点で議決権を行使出来ない等です。 注意するべきは、株主平等原則(会社法109条)に留意する必要があることです。

単元株制度を利用

会社法において、一定数の株式のまとまり(単元)を定めることができます。この単元に1議決権を与えることが可能となります。なお、会社法施行規則によれば1単元は、最大1000株を超えることができません(それ以下でも良い)。すなわち、1000株を1単元として1つの議決権があります。これにより、単元未満(先の例では900株しか有しない場合)は議決権がありません。株主の保有比率などを考慮しながら、単元数を決定することが可能です。種類株式の場合は、種類ごとに単元数を決定できます。いわゆる、複数議決権も可能です。

株式分割による買収防衛策

株式分割とは、発行済み株式1株を細かくすることです。1株を2株に分割すると、既存の株主の有する株式も倍になります。全体の発行総数も倍となります。この株式分割は、株式数が増えても、払込みがなされないので、資本金が増えたり、時価総額が増えたりしません。

買収防衛策として効果があるのか気になるポイントです。株式数が倍となれば、買収資金も倍必要となります。このように分割した割合分の資金が増えることになります。通常は、1株を5株にするように設定されていることが多いです。買収資金も5倍必要となります。防衛策としては、威力はあります。

それ以外の防衛策

新株・新株予約権を発行しなくても適切な防衛策を導入することが可能です。新株発行などは場合によって差し止められるリスクがありますが、株式内容に着目する場合は、リスクは低く抑えられます(ゼロでは無い)。上記はあくまで防衛策の一例にすぎません。これらに限度されるものでは無いので、平時では何らの防衛策にならず、有事にのみ防衛策として用いることの出来る内容もあります。

結びにかえて

株式内容に着目する場合は、導入するのに複雑な法律上の手続きが必要です。これらの手続きの1つでも欠いた場合には、無効となってしまいます。導入には細心の注意が必要です。導入しても、その時々の事情に合わせて逐次内容を修正できるメリットがあります。