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株式移転(stock transfer)

【株式移転(stock transfer)とは 】

株式移転(stock transfer)とは、一又は二以上の株式会社が発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させる事です(会社法2条32号)。新たに親会社を設立することになり、既存の会社は子会社となります。株式移転は、合併などと異なり、完全な統合ではなく、緩やかな統合と言えます。合併に進む前段階として、株式移転を用いる事もあります。より詳細に記すと次のようになります。

▼ 株式移転の為の手続き ▼ 株式移転の流れ ▼ 株式移転と株式交換の違いについて
▼ 結びにかえて

株式移転の為の手続き

株式移転を行う為には、株式移転計画について作成する必要があります(会社法772条1項)。なお、複数で株式移転を行う場合は、共同で株式移転計画について作成する必要があります(772条2項)。株式移転計画に記載するべき内容は法定されています(会社法773条)。具体的には下記のとおりです。

株式移転により設立する株式会社(親会社)の目的、商号、本店所在地、発行可能総数
親会社の定款で定める事項
親会社設立時における取締役の氏名
設立時の会計参与、監査役、会計監査人の氏名又は名称(該当するもの)
親会社から子会社の株主に対して交付する株式の数または算定方法、親会社の資本金
子会社の株主に対する株式の割当事項
子会社の株主に対して社債等を交付する際の金額又は算定方法等
その他、新株予約権及び新株予約権付社債に関する事項

株式移転の流れ

子会社(既存会社)においては、株式移転計画等について備置する必要があります(会社法803条1項)。株式移転を行うについて株主総会の特別決議が必要です(会社法804条1項)。なお、子会社の株主に対して交付される株式が譲渡制限株式である場合は、種類株主総会の決議が必要となります(会社法804条3項)。


株式移転と株式交換の違いについて

株式移転と株式交換は、親子会社関係を構築手法です。両者は似ている部分が多くあります。だた、異なる点もいくつかあります。具体的な違いについては下記の表のとおりです。


株式交換の詳細はコチラ

結びにかえて

株式移転は、戦略的企業再編(広義のM&A)の代表的な手法の1つです。特に親子関係を構築(企業グループ形成)する場合に用いられます。既存会社の株式を100%移転させることとから、株主会社及び会社債権者を害する可能性が低いので、合併、会社分割、株式交換などより手続きが簡略化されています。

 どのような手法を用いるかについては、個々の事情及び株主、債権者等との関係により選択する事になります。会社法上では、組織再編行為として位置づけられており、無効訴訟提起などは、他の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換等)と同様です。会社法が定める手続きを無視した場合は、無効となる可能性が高くなります。手続きを進める上で、専門家の助言は必須と言えます。